2011年04月12日 11:48
内容はものすごくつらいものなのですが、サラサラ読めます。
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、
そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、
気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、
存在しないはずの「姉」に出迎えられた。
どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
と、パラレルワールド系の良くある話なのかもしれませんが、
主人公がいる世界といない世界の差が、本人の存在によって
全く変わってしまっているというもの。
オチの鋭さが絶妙です。どん底へ突き落としてくれます。

今は米澤さんの「犬はどこだ」をもう少しで読み終える所です。
そろそろ文庫本の未読作品も少なくなってきたので新しい作家さんを
開拓しなければいけません。Story Sellerで読んだ
有川浩、道尾秀介、本多孝好さん辺りで探してみようかな。
以下、ネタバレを含む感想。
その対象が元の世界ではリョウで、飛んだ先の世界ではサキだった。
それだけで、ノゾミの人生は全く違うものになっていて、
両親の関係も、定職屋の親父さんも、雑貨屋の存在も
変わってしまっている。
そのことを徐々に突きつけられて、自分の存在価値を
どう見いだすのか、と悩んだ末に元の世界に戻る。
そして母親から掛かってきた電話。
場所が場所だけにその後も想像できてしまう。
ただの通過点だと思っていたものが、実は分岐点だったと。
後で気付いても遅いのですが、この言葉は印象的です。
内容が内容だけに「面白い」作品とは言えないのですが、
いい本だったと思います。
米澤さんの本の記事では何度も書いてますが、Story Sellerの
玉野五十鈴の誉れから入った身としては、これぞ米澤流です。
古典部シリーズも好きですけど、さよなら妖精や、ボトルネック等の
こういう感じが独特で好きです。
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